福岡高等裁判所 昭和60年(う)260号 判決
原審における未決勾留日数の算入について考察すべきところ未決勾留日数の本刑算入は刑の量刑に準じ,刑事訴訟法381条にいわゆる広義の量刑不当にあたるものとして,控訴理由とすることができるものである。未決勾留日数の算入は本来裁判所の裁量に属するものであるが,完全な自由裁量ではなく,通常審理に要すると考えられる日数を控除したその余の日数は本刑に算入すべきものといわなければならない。したがって,未決勾留日数の算入,不算入が裁判所の裁量の範囲を逸脱して著しく不当である場合には,量刑不当として破棄を免れない。
これを本件についてみるに,記録によれば,原審は昭和59年4月28日の公訴提起以後九回の公判審理を重ね,昭和60年3月14日第10回公判期日において判決を言渡したものであるが,右第1回の公訴提起のあと,昭和59年5月16日から同年10月19日まで(いずれも窃盗)と同年11月30日(道路交通法違反)に合計8回の追起訴がなされていること,本件事案は窃盗16件(うち1回は未遂。なお犯行場所は岡山,広島,山口,香川,福岡,大分,熊本,宮崎の各県にまたがっている。)及び道路交通法1件であるが,被告人は原審公判廷において大半の事実を認めたため,窃盗1件(右未遂の分)と道路交通法違反(心神喪失ないし心神耗弱の主張)についてのみ証人尋問が行われたが,ほかに出頭拒否等の被告人の責に帰すべき事由は存しないことが認められる。そこで,右事案の内容や審理の経過等に照らすと,本件について審理に必要な日数は約6か月間と解せられ,これを超える日数を本刑に算入するのが相当であると考えられる。
したがって,公訴提起後の未決勾留日数が320日(起訴前の勾留を含めると329日)あるのに,そのうち60日のみを算入するにとどまったのはやや過少であることが否めない。しかし,本件の場合には,未決勾留日数の算入を60日としたことにより80日ほどの不足が存するとしても,その差の程度や主刑が懲役6年であること等に照らし,著しく不当であるとはいい難い。